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【2】アイルランドでの活動

 ニユージーランドでの活動の翌年、今度はアイルランドに行きました。他国のボランティアと一緒に活動し、ボランティアの難しさと意義を改めて考えることができる、とても貴重な経験でした。

 活動先は「ホリデーホーム C」で、約2週間住み込みのボランティアとして働きました。「ホリデーホーム C」の施設概要は、次の通りです。
・アイルランド全国から、障害のあるゲストが休日を楽しみにやってくる宿泊施設。
・牧草地帯の広大な敷地に、宿泊棟、食堂棟、教会、グラウンド、畑がある。
・各施設間は、屋根とガラス壁つきの渡り廊下で結ばれ、車椅子で移動できる。
・ゲスト60名宿泊可。宿泊棟には、200席のバー、会議室、パソコン室等がある。
・宿泊室には、車椅子用トイレ・シャワー、TV、電話、呼出ベル等を完備。
・車椅子リフトつき大型・小型バスを多数もち、外出や送迎に活用されている。

 ゲスト(宿泊者)は、車椅子利用者が中心ですが、知的障害者や高齢者、その家族・友人なども訪れます。障害の種類・重度はさまざまで、滞在期間は1週間程度が標準的です。介助はホリデーホームの職員、あるいは同行した職員等が行ないます。
 ホリデーホームでは、ゲストの興味に合わせていろいろな企画が用意されています。外出(買物、映画、釣り)、ゲーム(ビリヤード、卓球、ドミノ、TVゲーム)、創作活動(陶芸、絵画)、セラピー、マッサージ、スポーツ(車椅子スラローム、ラケットベース、オリエンテーリング)、夜のイベント(生演奏、カラオケ、DJ、クイズ、ゲーム)などです。

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 今回一緒に活動したのは、海外からのボランティアである次の4人です。イギリス人(女性、40歳代、無職)、ドイツ人(男性、20歳代、学生)、イタリア人(女性、10歳代、学生)、日本人=私(男性、40歳代、休職中)。
 部屋は相部屋で、食事は提供されますが、交通費は自己負担で報酬はありません。主な仕事は、ゲストの介助、企画やイベントの運営、食堂の補助です。最も期待された役割は「ゲストとの交流」です。異なる文化をもつゲストとボランティアが一緒に活動して交流し、互いに刺激しあうことを求められました。いつ何をするかは各自に任され、朝8時から深夜12時までの間に適宜休憩をとりながら、「ゲストとの交流」を中心に自発的に活動することを求められました。

 ゲストとの交流に際しては、これまでの経験をもとに、心を開いて自分を出し、よく話を聞くよう心がけました。異文化をもつことを強みと考えて、日本文化を紹介するツール(小道具)を多数持参しました。これらは交流のきっかけづくりに、みごとに機能しました。持って行ったのは、日本紹介の本、折り紙、筆ペン、日本茶、箸、扇子、和凧、竹とんぼです。
 折り紙は、海外で日本文化を紹介する定番ツールですが、中でも評判がよかったのは「紙風船」です。「紙風船」はそれなりに複雑な折り方で、時間をかけて作っていきます。見ているゲストは「いったい何ができるんだろう」という気持ちで、私の手や表情を見ています。そして最後に「フッ」と息を吹き込むと、パッと折り紙が膨らんで「紙風船」が出来上がります。すると見ていたゲストは、一瞬だけ静まり返った後、満面の笑みで拍手喝采してくれます。これは絶対お勧めですから、機会がありましたら是非お試しください。
 他には、デジカメで動画を撮るのもコミュニケーションには役立ちました。スポーツをしているところを撮影して後で見せると、大喜びで一気に距離が近づきます。
 このように、英語力不足は絵、写真、身振り手振り、ツールなどさまざまな方法で補いました。しかし、ゲストは1週間で入れ替わるため、信頼関係を築く意味ではやや交流機関が短いと感じました。国内の施設では5ヶ月間、ニュージーランドでは6週間でしたので、余計短く感じたのかもしれません。

 仕事の時間と内容は「基本的にフリー」と言われていました。「ゲストとの交流」をメインに、その他は仕事の例を提示されるだけで、明確な指示はありませんでした。
 私は自分の役割を「異文化でゲストに刺激を与えること」と考え、主にこれに注力しました。ボランティアとは自分で役割と居場所を考え、自分と相手の双方に有意義な関係をつくりだして活動すべきものです。私はこれまでもそう考えていたので、「基本的にフリー」なこの活動に違和感なく取り組めました。一方で、他のボランティアは自由であることに不安を覚え、いつどこでなにをすべきかの指示を求めていました。また、「ゲストは仲間同士で楽しんでおり、自分は必要とされていない」と感じるボランティアもいました。他のボランティアの悩む姿を見て、私たちは休憩時間にいろいろと話し合いました。私は持論を話してみたのですが、いまひとつ彼らとは噛み合いませんでした。「ボランティア」は、ひとによって捉え方がさまざまです。彼らとの議論は、ボランティアの本質を再認識させてくれました。

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 ニュージーランドでは単独での活動でしたが、今回はバラエティに富んだメンバーとともに活動しました。他の3人のうち2人は常識と良識があり、活動中もよく話し合って助け合うことができました。1人は意欲と責任感に欠けているように思いましたが、それもボランティアの多様性なのかもしれません。全体としては多様なメンバーが補い合い、よいチームだったと思います。
 初日と最終日にミーティングが開かれ、活動への期待と、終了後の評価を話し合いました。4人ともそれぞれの思いで参加していることがわかり、興味深い機会でした。若い時期の経験のため、視野を広げたい、語学の上達、新たな自分探し、等々です。「真面目に、しかし気軽に、そして楽しむ」が共通のキーワードのように感じました。

 知識を得るための視察ではなく現場での活動でしたが、機会を見つけてはゲストやスタッフから、この国の福祉現場の様子を聞かせてもらいました。障害者の権利擁護についての講演とゲストによる討論会に出席しましたが、目指していることや現在の取り組み状況は、概ね日本と同様でした。 ホリデーホームは、本人の休日と家族の休息の両面から有効で、日常生活を営んでいる入所施設から離れて、休日を楽しむことに徹していることがポイントだと思いました。
 そして、音楽を愛する国民性から、老若男女が障害の有無に関わらず、車椅子利用者も一緒に、毎晩バーで歌とダンスを楽しんでいるのが印象的でした。夕食後は毎晩日替わりのイベントが開かれるのですが、どれも結局最後は歌と演奏とダンスになります。私も日本の歌謡曲を披露しましたが、たまにしか歌わない私とは違って皆さん本当に音楽が大好きで、日々の生活に音楽が溶け込んでいました。歌やダンスは「うまく」ではなく「楽しく」しているように見えて、とても羨ましく思いました。

 アイルランドでの活動を振り返ると、次の点がポイントだったと思います。
・自分の役割を自分なりに実行し、能力と特性を生かした貢献ができたと思う。
・ひと相手のボランティアは、継続と信頼関係が重要であると、改めて感じた。
・ボランティアの難しさと意義を改めて考え、自信が深まったことは大きな収穫。
・ホリデーホームの実際の様子を見て、休日の重要性を再認識した。
・外国人として様々な立場の人と協力することで、新しい発見ができた。

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 ニュージーランドと合わせた二度の海外での活動を通じて、違いに対する感情とそれが差別に結びつく仕組みが、少し見えたような気がします。現地で最も異質だったのは外国人である私であり、障害のある彼らではありませんでした。異質な者の立場で暮らすことにより、違いというものをひとがどう感じるかがわかりました。
 ひとはどうしても違いに注目しがちです。違いを認識することで自分の位置を確認する癖があるようです。私も当然その傾向があります。大切なのは、自分にもそういう傾向があることを知っていることではないでしょうか。知っていれば、自分の感情を客観的に捉えて、どうしたらよいかを考えることができるように思います。そんなことを、海外の活動を通じて感じました。

 そして、地域での活動の重要性も再度認識しました。海外でのボランティアは、視野を広げたり新しい発見もできてとても有意義です。二度の海外ボランティアは私にとってとても素晴らしい経験となりました。しかし、ボランティアの基本は地域での活動だと思います。自分が生活するコミュニティで、できることをしていくことはとても大切だと、海外で活動してみて改めて感じました。

 ニュージーランドと同様に、別ブログ『ボランティア雑記帳』で、当時アイルランドの現地で毎日書いていた日記を『音楽の国でボランティア』という9回のシリーズ記事で紹介しています。そのとき現地で私が感じたことをそのまま書いたものです。上記のような綺麗ごとだけでなく、少しドロドロした気持ちも書かれています。ご興味のある方は、読んでみてください。下記の青地のリンクからどうぞ。

 『ボランティア雑記帳』のテーマ「海外ボランティア」

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