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【3】木村さんと写真撮影

 2年間のボランティア休職の後に復職してからは、土日を利用して月1~2回程度の活動を続けました。そのひとつが「木村さんと写真撮影」です。
 木村さん(仮名です)とは、彼が住んでいる施設に、ボランティアとして通っていたときに知り合いました。5ヶ月間通った身体障害者の施設です。
 木村さんは写真撮影が趣味で、花や紅葉などの写真を撮りによく外出します。そのときの介助を頼まれて2人で出かけるようになり、それが復職後も続きました。紫陽花と紅葉がきれいな本土寺(松戸市)、蓮の花が楽しめる千葉公園(千葉市)、羊山公園の芝桜(秩父市)、鎌倉の紅葉、神宮外苑の銀杏並木など、あちこちの撮影名所に行きました。

 木村さんは手足が不自由で、電動車椅子利用者です。そこで、車椅子に高性能のカメラとレンズを装着して、カメラを操作する補助装置を駆使して撮影を楽しみます。写真の通り、撮影をするときは電動車椅子にポール(支柱)を取り付けて、そこにカメラを固定します。ポールとカメラの間には、「電動カメラ雲台」という装置を接続しています。バッテリー電源を使って、リモコンでカメラの向きを上下左右に変えられる装置です。もともとビデオカメラ用の装置ですが、木村さんはこれを使うことで自在にカメラアングルを調整します。4つの青いボタンで上下左右にカメラの向きを変えます。また、上の方にある別のスイッチでシャッターを切ります。
 私の主な役目は、電車等での移動とコミュニケーションのお手伝い、トイレの介助です。といっても、木村さんはほとんどのことはご自分でしますので、私の出番はあまりありません。あとは、現地についたときのカメラのセッティングです。ポール・バッテリー・カメラ・リモコン等を設置して、撮影終了時にそれらを片付けます。あとは、たまにポールを上下に調整することがある程度で、あとは全て木村さんがご自分でします。

 最初の頃の私は、木村さんが外出する際に介助するボランティアでした。何度か同行するうちに、木村さんから「カメラ持ってきたら?」と言われて、コンパクトデジカメを持っていくようになりました。そうしたら、木村さんから「そんなカメラじゃダメ。もっといいカメラを買いなさい。」と言われました。一緒にヨドバシカメラに寄り道しているうちに、私も「いいカメラ」が欲しくなり、ついにデジタル一眼レフカメラを買ってしまいました。
 それからは、私は外出介助のボランティアではなく、木村さんと一緒に同じ趣味を楽しむために出かけている友人になりました。目的地も最初のうちは、木村さんが行きたいところに私がついて行っていましたが、そのうち私が行きたいところについて来てもらうパターンも増えました。
 もともと木村さんとは年齢も近く(木村さんの方が少し年上)、要するに同じ「オジサン」なので、話題も比較的あうことが多かったのですが、彼の影響でデジタル一眼を買うことになるとは思いませんでした。私は完全に初心者でしたので、「絞りは5.6がいいよ」とか、「思いっきりシャッタースピード落としてみたら?」などと、アドバイスしてもらっていました。

木村1木村2

 さて、実際に木村さんと写真撮影に行ったときの様子をご紹介します。
 まずは、東京の神代植物公園です。この日は当初は、駒込の六義園につつじを撮りにいく予定でした。でも、つつじは終わってしまったので、急遽目的地を変更しました。気がかりだったのはバスです。電動車椅子が乗れるかどうか・・・。なにしろ当日の朝、待ち合わせした駅で目的地を変更したので、下調べ全くなしです。「今日は少し冒険を楽しもう」という気持ちで行くことにしました。
 まず104で電話番号を調べて、バス会社に問い合わせました。「全車車椅子対応です。混み合うと1~2台やり過ごしていただくかもしれませんが、本数は多いので大丈夫だと思います。」とのことでした。木村さんに「バスは乗ったことあるんだよね?」と聞くと、「いいや」との答え(冷汗)。とにかく行ってみよう、ということで出発しました。

 電車を2回乗り換えて、最寄りのつつじヶ丘駅に着きました。バス停で待っていると、確かにノンステップバスが来ました。運転手さんに合図すると、乗りやすい位置に上手に停車してくれました。慣れた手つきで出してくれたスロープを使って、木村さんは自走で乗車できました。椅子を2つたたんで、必要十分なスペースも確保できました。降りるときも問題なく、思ったよりスムーズに目的地に到着しました。
 神代植物公園では、「春のバラフェスタ」を開催中でした。木村さんは2日前にTVでその様子を見て、目的地の変更を提案したのです。行ってみてビックリ、色とりどりの様々な種類のバラが咲き乱れ、素晴らしい光景でした。時期もちょうどよかったようで、写真撮影には最適でした。2人ともひたすらシャッターを切りまくり、木村さんのフィルムがなくなったところで、ようやく遅い昼食にしました。
 バスは帰りも偶然同じ運転手さんで、全く問題なく駅に着くことができました。電車の乗り継ぎが悪く、予定より帰りが少し遅くなってしまいましたが、よい1日になりました。ここで乗り継ぎがよければ、あんなことにはならなかったのに・・・。

 もうひとつの問題は天気でした。今日の予報は「曇り時々雨」で、朝と夕の2回にわか雨があるかも、とのことでした。行きの電車の中で大雨が降ってきましたが、つつじヶ丘に着く頃は止んでいました。そして写真撮影の間は、ずっと曇りか薄日がさしていて、最高の天気でした。しかし帰りの電車の中で、西の空が怪しくなりはじめました。いつも通り木村さんが住む施設の最寄駅で解散。彼は自力で施設に向かい、私は家路につきました。そして解散の10分後、ドシャブリになりました。後でメールで「濡れた?」と聞くと、「ズブヌレ」とのこと。念のため合羽を着て帰るべきだった!ちなみに私は帰りに床屋に寄ったので、濡れずに済んでしまいました。木村さん、ごめんなさい。

<神代植物公園>
木村3

 次は、旧古河庭園に行ったときの様子です。
 天気もよく、電車の乗り継ぎもスムーズで快調。最寄駅の京浜東北線「上中里駅」から、約10分。二人とも初めてでしたが、迷わずに到着しました。電動車椅子にカメラと補助装置をセッティングして、いざ撮影開始!まずは、花に囲まれた素敵な洋館を撮ろう、と私は構図を考えてウロウロしていると、木村さんが「下にどうやって行くの?」と。
 目的のバラ園は、洋館の目の前です。しかし、洋館から少し降りたところにあります。係の人に聞いてみました。「階段でしか行けないんですよ。洋館の前から見おろして楽しんでいただくしか…。すみません。」とのこと。
 結局、木村さんは洋館の周辺のみ、数枚だけ撮影しました。木村さんの「下行って撮ってきていいよ」とのお心遣いに甘えて、私は10分くらいバラを撮らせていただきました。

 木村さんと写真を撮りに行くのは、十数回目でした。いつもは、事前に交通アクセスと現地のバリアフリー状況を、ネット等で一応調べて行きます。この日は、園内マップを少し見ただけで、来てしまいました。階段らしいところは見当たらなかったし、忙しさも手伝ってサボってしまいました。目的地は木村さんの提案でしたので、問題ないだろうと勝手に思いこんだ部分もありました。少し反省…。まあ、いくら調べて行っても、「こんなはずじゃ…」ということは、結構あるんですけどね。
 ともあれ、このままでは引き下がれない木村さん。
木村:「どこか行こう。」
私 :「望むところだ。」
木村:「日比谷は?」
私 :「でた、困った時の日比谷公園。」
木村:「ソニービルは?水芭蕉。TVでやってた。」
私 :「あ~、ビルの前に水芭蕉ね。いいじゃん。じゃあ、銀座寄ってから日比谷行こう。」

 ということで、急遽ソニービル経由で日比谷公園に行くことになりました。数寄屋橋のスクランブル交差点を斜め横断すると、そこは尾瀬。かわいらしい水芭蕉が咲いていました。狭いスペースには木道もあって、よくもまあ上手に尾瀬を再現したこと。ここのイベントは、いつも素敵です。
 私はかわいらしい花々を、パシパシ撮りました。しかし、木村さんとしてはイマイチのようで、カメラをセッティングせず。早々に日比谷公園に向いました。
 日比谷公園は、年間を通じて様々な花が咲いています。ですので、「困った時の日比谷公園」ということで、目的地が期待はずれだった場合、「日比谷公園でも行こうか」ということになります。平坦な地形も、電動車椅子には向いています。この日も、バラを中心に何種類かの花が咲いていました。木村さんも、やっと落ち着いて撮影に入ります。二人であちこち移動しながら、1時間ほど撮りました。

<日比谷公園>
木村4

 電動車椅子利用者である木村さんと外出していると、いろいろ珍しい体験をします。苦労もありますが、ここでは「おもしろい体験」と「嬉しい出来事」をご紹介します。
 まずは東京駅の「おもしろい体験」。巨大ターミナルは複雑な構造です。エレベーターを乗り継ぎ、次の電車のホームを目指します。途中、「こちらです」と駅員さん。「はい」と案内に従っていくと、そこはバックヤード。駅や飲食店のスタッフが往来する裏通路です。
 「へえー、こんなところ通るんだ。いつもと違うな。」とこの時点では、「??」という感じでした。あまりキレイではない業務用エレベーターに乗ったときは、「なんで裏を通らなきゃいけないんだろう。」と少し不満に思ったりしていました。壁や天井は古く、照明も暗め。台車の音が騒がしく、お客さんを案内するところではないと感じました。
 でも、なんか迷路のような通路をクネクネ行くのも楽しく思え、一般人が入れないところを通っているドキドキ感もあったりして、やや複雑な心境でした。これからどうなるんだろう…。

 そのうち天井が低くなりました。「あれっ!」と思わず声を出してしまいました。天井が丸くトンネル上になっていて、全て赤レンガ。そこは大正浪漫の世界。タイムスリップした気分でした。「こりゃすごいわ」と木村さんと二人で、キョロキョロしてしまいました。エレベーターを上がると、そこは京浜東北線のホーム。まさに、タイムマシンに乗った感覚でした。
 そう言えば、「車椅子用の通路が地下にある」と聞いたことがありました。「これがあの通路か」。あとで調べたら、旧郵便物運搬通路の「赤レンガ通路」というのだそうです。残念ながら撮影禁止のため、写真はありません。興味のある方は、車椅子利用者と一緒に行くか、東京駅に勤務してください。(「東京駅 赤レンガ 通路」で検索すると出てくるかも)

 それと、驚いたことがひとつあります。ここは業務用通路ですので、たくさんのスタッフが往来します。弁当、飲み物、雑誌など、様々な物を台車に乗せて運んだりしています。私たちが通ると、そのスタッフの皆さんは必ず立ち止まってくれるのです。お客様に安全に通行してもらおう、ということでしょう。こういったことは、そういうルールになっていても、ややもすると徹底されていないものです。しかし、ここでは例外なく皆立ち止まって優先してくれました。

 続いて「うれしい出来事」です。京浜東北線の「上中里駅」から、「有楽町駅」へ行くときのことです。
 上中里駅で駅員さんに「有楽町までお願いします」と伝えました。ホームで待っていると、アナウンスがありました。「業務連絡、東京駅連絡OKです」。私は駅員さんに尋ねました。「東京ではなくて、有楽町なんですけど…」。すると駅員さんは、「はい、次の電車は快速なので、有楽町に止まりません。東京で山手線に乗り換えるお手伝いをさせていただきます。東京駅へは連絡済ですので、ご安心ください。」

 一昔前なら、「次は快速なので、もう一本後の各駅停車まで待って下さい。」と言われていたでしょう。この日は少しでも早く、一般の人となるべく同じように、という配慮をいただいたのが嬉しかったです。交通機関のバリアフリーについての配慮は、年々改善されてきています。ときには「??」ということもありますが、駅員さんの対応は着実によくなっていると感じました。

 「木村さんと写真撮影」については以上です。
 このブログの元になっている別のブログ『ボランティア雑記帳』には、「木村さんと写真撮影」の活動と、後述の「大山さんと野球観戦」を合わせて、「地域の友人として」というテーマでまとめてあります。ここには書ききれなかった他の日の様子を読むことができます。よろしかったらご一読いただけると幸いです。下記の青字のリンクからどうぞ。

『ボランティア雑記帳』のテーマ「地域の友人として」

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