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第2章 私のための制度 ~2年間のボランティア休職~

【1】ボランティア休職制度とは

 私は2003年から2004年の2年間、会社の「ボランティア休職制度」を利用しました。仕事を休んで毎日ボランティアばかりする期間を過ごしたのです。私にとってとても大きな2年間で、今の私の活動のベースになっています。ここでは、私の会社の当時の制度について概要をご説明し、制度の利用を決意した時の気持ちも書いてみたいと思います。(記憶を辿って書いているので、制度の内容は正確ではありません。また現在は制度が変わっています。)

<当時の制度の概要>
1.目的
 社員が一定期間ボランティアに専念できる制度を設けることにより、仕事との両立を図りながら、社会に貢献できるよう社員を支援すること。社員の社会参加を積極的に促すこと。

2.活動
 国、自治体または非営利団体を通じた、会社が認める社会福祉または開発途上国援助の活動。

3.期間
 最大3年間(私の場合は2年間)

4.実績
 過去の利用例としては、青年海外協力隊への参加、NPOの立ち上げなどあり。

5.「ボランティア休暇」との違い
 「休暇」は1日単位で有給休暇の他にとれる制度。
 「休職」は3ヶ月以上の中長期で休む制度。

6.期間中の処遇
 給与・賞与は無し。ただし「ボランティア活動支援金」を支給。
 「収入はかなり減るが、一定額が支給される」という形。(詳細はご勘弁ください)

色エンピツ

 私は、2000年にボランティア活動を始めてから、少しづつ活動の幅を広げていきました。ただ、どうしても週末などを利用した短期的な活動になっていました。一度まとまった期間ボランティア活動に専念して、土日ボラだけではできないことをやってみたいという気持ちが、しだいに自分の中でふくらんでいきました。

 そんなとき、ボランティア休職制度のことを知りました。一定の期間、自分の活動を会社が支援してくれて、しかも復職できる。これは私にとってはとてもありがたく、素晴らしい制度だと思いました。
 もちろん不安もありましたし、収入減少や昇格ストップなどのデメリットもありました。実際に利用する人はとても僅かで、当時数千人の従業員のうち、累計利用者は一桁でした。それだけ利用するには勇気のいる制度でした。
 しかし、私はだんだん「これは私のための制度ではないか」、「私が利用しなくて誰がするのだろうか」と思うようになりました。それに、このような制度を導入している会社はまだ多くなかったので、そんな会社にいる幸運に感謝する気持ちで一杯でした。そして、家族の了解も得て会社に申請し、認めていただきました。

 今でも、「やはり思い切って制度を利用してよかった」と、思っています。

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※この記事の元記事(ブログ『ボランティア雑記帳』)
 ボランティア休業制度
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【2】ボランティア休職中の活動概要

 さて、2年間のボランティア休職中に行った活動の概要をご紹介します。
 1年目は、「まずは地元の障害のあるひとと直接ふれあう機会を十分につくろう」と考えて、施設2箇所にほぼ毎日通う活動(後述の①と②)を中心に取り組みました。そして2年目は、「地域で個人を支える活動」と「啓発活動」に軸足を移して、地元の市民グループの活動(③と④)を中心に取り組みました。
 2年間というまとまった期間は、人生の中でもなかなか取れません。そこで、異なる環境で多様な考え方にふれ、今後の活動を考える刺激にしたいと考えて、海外での活動(⑤と⑥)も組み込みました。また、ボランティア活用の可能性と課題について理解を深めるために、ボランティア団体の運営(⑦)にも関わりました。あわせて、資格の取得(⑧)にもチャレンジしました。
 全体としては、現場での活動をベースに、活動の振り返りと将来の展望を繰り返し考えながら活動を組み立てるようにしました。そして、常に「まじめに、貪欲に、行動的に」を心がけました。

 それでは、個々の活動の概略をご説明します。

①知的障害者通所更生施設「でい・さくさべ」
 最初の5ヶ月間に週4日通い、さまざまな活動に参加しました。このとても濃い5か月間で、障害とボランティアについての考え方のベースを得ることができました。私は近所の一般の人として利用者さんと自然に関わって、お互いに刺激を与えあうように心がけました。そして、「全ての人は得意・不得意や共通点・相違点があることにかわりない。」と、考えるようになりました。
 その後も週1~2日定期的に訪問し、利用者さんとの関係を継続的に深めていきました。後半は、利用者さん個人とのつきあいを重視して、個別に外出することが多くなりました。

②身体障害者療護施設「ディアフレンズ美浜」
 「でい・さくさべ」に通った後の5ヶ月間、週2~3日通って日常生活の介助や活動の支援を行ないました。身体障害者の施設なので、食事や移動の介助が多かったのですが、ボランティアの自由な立場を生かして、利用者さんと時間をかけてふれあうなど、+αの活動を心がけました。
 後半は、利用者さん個人との外出も行ないました。利用者さんが自立生活センターに行く際に何度か同行したのですが、障害のあるひとの自立をとりまく現実にふれることができ、貴重な経験となりました。

③市民団体「パートナーシステムちば」
 知的障害のあるひとと外出する活動「ビー・フレンズ」に、6回参加しました。「地域で支援する一般のひとを育てる」という活動に惹かれて参加を決めました。保護者やメンバーとの会合に出席したり、団体としての助成金選考会でプレゼンをお手伝いしたりしました。この活動を通じて、「施設に通って介助するというよりも、地域での個別の支援を大切にしたい」という、今後の活動の方向性を再確認できました。

④市民団体「市民福祉活動センターBit」
 「障害当事者による福祉啓発活動」を行っている団体で、小中学校の福祉講座で4回、運営を手伝いしました。あわせて、この団体が主催する「ガイドヘルパー養成講座」に、事務局と受講生として参加しました。その後、啓発活動の推進は私の夢になっていくのですが、休職中のBitの活動はその発端となったものです。

⑤ニュージーランド(2003年夏)
 知的障害者グループホームに2ヶ月間住み込んで、日常生活支援、家事、家畜の世話、部屋のリフォームなどを行ないました。2ヶ月間毎日寝食をともにする活動は密度が濃く、たいへん有意義なものでした。ここでも彼らに刺激を与えることを期待され、ボランティアの意義を再認識することになりました。福祉先進国の状況を体感できて、新しい取り組みにもふれることができました。

⑥アイルランド(2004年夏)
 身体障害者ホリデーホームに1ヶ月間滞在して、ゲストとの交流、日常生活支援、イベントの運営、食堂の補助などを行ないました。仕事は自主的に決めて行なうことを求められ、「ボランティアは自分で役割と居場所をつくりだすもの」ということを改めて認識しました。外国人として活動するなかで、障害者に理解があっても人種に偏見をもつ人もおり、違いに対する感情や無知が差別に結びつく仕組みが少し見えた気がします。

⑦NGO「赤十字語学奉仕団」
 語学を手段に障害者を支援する団体です。休職前から参加していたのですが、休職中も活動を継続しました。2003年度は、介助ガイド活動の「コーディネーター」として運営に関わりました。主要な2本の活動に30人、50人のメンバーを派遣するなど、活動依頼者とメンバーの調整を行ないました。
 コーディネーターの仕事を通じて、依頼者と活動者の認識を近づけることの重要性と、それぞれの思いで参加しているメンバーをまとめることの難しさを感じました。メンバーとしてもさまざまな障害と文化をもつひとの介助ができ、視野を広げることができました。

⑧資格取得
 「ホームヘルパー2級(訪問介護員)」と「知的障害者ガイドヘルパー(知的障害者移動介護従業者)」の資格を、期間中に取得しました。

 休職中の活動の主要な成果は、次の通りです。

 ◆障害のあるひとについての理解が深まり、知識や技術も身についた。
 ◆ボランティアについての、自分のスタイルをつくりあげることができた。
 ◆地域での交流範囲が拡大し、人的なつながりを築くことができた。
 ◆これらによって、今後の活動の基盤を得た。
 ◆上記の過程を通じて、自分自身の成長につながった。

お爺さんと看護師

 感想も含めて、もう少し言葉にしてみます。

①障害について
 さまざまな障害、人種、文化、宗教のひとと多く接するなかで、「全てのひとは得意・不得意や共通点・相違点があることにかわりない。」と考えるようになりました。ひとはどうしても違いを見つけて特別な感情をもつ傾向がありますが、共通点と相違点をありのままに楽しみたいものです。そして、多様なひとびとが地域で支えあって生きていて、障害のあるひともそのなかで自然にあたりまえに生活を楽しんでいる社会にしたいもの。そんな考えが私の中でまとまっていきました。

②ボランティア活動について
 団体に所属するのではなく、活動を自分で組み立ててきたので、全てが手探りしながらの挑戦でした。この試行錯誤を通じて、「ボランティアとは自分で役割と居場所を考え、自分と相手の双方に有意義な関係をつくりだして活動すべきもの」という考えが強くなりました。この「常に自分の意味づけが必要」というのが、ボランティアの難しさなのですが、そこに新しい関係が無限に広がっていく可能性もあるのだと思います。

③勤労者と地域について
 地域にとって勤労者や企業は遠い存在であることを改めて感じました。私は活動を通して地元の知り合いが一気に増えました。地域に住むあらゆるひとが、仕事や趣味、家族、ボランティアなど多彩な接点で地域に参加することで、ひとりひとりの生活が充実するとともに、地域や企業にも活力が生まれていってほしいと思います。

④感謝
 2年間いつも充実している自分を感じることができました。さまざまなひとや価値観にふれたことは、私にとって大きな刺激となりました。新しい自分をつくっていく過程は、厳しさと同時に喜びも多く、自分なりの成長につながったと思います。これらは私を支えてくれたたくさんのひとたちの力がなければ、得られなかったものだと強く感じています。私の活動にご理解とご協力をいただいた、会社および関係者の皆さんに、心から感謝したいです。

 ボランティア休職が終わるとき、「これでボランティアはおしまい」とは、もちろん考えていませんでした。引き続きひとりの地域の人として、近隣にすむ障害のあるひとと関わっていきたいと考えて、復職後も土日に月2日くらいは、できる範囲で活動を継続したいと思いました。
 そして、「ボランティアの仲間を増やしていきたい」とも考えていました。ボランティアへの意欲や興味はあっても、きっかけや機会がないと感じるひとは多く、一方でボランティアが活躍する場面は、これからますます増えていくでしょう。少しでも多くのひとが最初の一歩を踏み出せるよう、私なりに貢献したい。具体的には、自分の活動を紹介する機会を地域や職場でもち、自分と同じ勤労者を中心としたひとたちに、ボランティアの必要性と喜びを伝えていきたい。そんな思いでした。

 将来は、企業と勤労者の力を社会や地域に生かすことにも貢献したいと考えていました。企業の社会貢献と勤労者の地域参加は、社会や地域の側から強く求められていると同時に、企業と勤労者自身にも大きなメリットが期待できます。広い視野と多様な価値観をもち、地域で活躍する社員をもつ企業は、活力にあふれた強い企業であるはずです。社員への啓発、情報と機会の提供、他の企業や地域との連携など、何ができるか検討しながら機会を探っていこうと思っていました。

 そして私は復職し、「毎日ボランティア」という非日常から、「普段は仕事、たまにボランティア」という普通の生活に戻ります。2年間のボランティア休職は、とても大きな経験でした。しかし、この後の「普通の生活の中でのボランティア」こそ、私にとって意義深いものになっていきます。

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※この記事の元記事(ブログ『ボランティア雑記帳』)
休職中の活動概要
休職中の活動の感想
【3】ボランティアは休職しなくてもできます

 ここで一言、念のためお伝えしておきたいことがあります。あたりまえのことですが、ボランティアは私のように休職しなくてもできます。
 私は、幸運にも会社の休職制度を利用して、ボランティア活動に専念する2年間を得ました。とても充実した期間で、さまざまな活動に取り組むことができ、素晴らしい経験でした。休職したからこそできた活動もたくさんあります。しかし、読者の方が、「私の会社にはボランティア休職制度はない」「制度はあるけど簡単には利用できない」ということで、あきらめてしまったら残念だと思います。

 休職しなくてもできることはたくさんあります。私も、初めてボランティアをしてから十数年が経ちましたが、そのうち休職していたのは2年間だけです。残りの期間は、仕事をしながら月に1~2日程度ボランティアをしてきました。
 そもそも「毎日ボランティアしている」というのは、かなり特別な状態です。ときどき無理なく楽しみながら、普通の生活の一部として社会と関わりのあることをしている、というのが自然でしょう。ほぼ毎日通っていた施設に、その後たまに遊びに行くようになって、かえっておつきあいが自然になった、ということもありました。施設の利用者にとっては、職員さんではないのに毎日通ってくる私は、不思議なひとだったかもしれません。たまに来て雑談をする私の方が、「近所のおじさん」として違和感なく受け入れやすかったのではないでしょうか。

 ですから、私の休職中の活動については、「普通はできない珍しい体験」として読んでいただき、私が「したこと」というよりは「感じたこと」を通じて何かを受けとめていただけたら、とてもうれしいです。
 もちろん、まとまった時間がとれるひとは、休職中の活動を現実的なこととして読んでください。「休職制度を利用しようとしているひと」「退職して新しいことを始めようとしているひと」「お子さんが大きくなって時間がとれるようになたひと」などは、これからのプランのヒントにしていただけると幸いです。

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※この記事の元記事(ブログ『ボランティア雑記帳』)
ボランティアは休職しなくてもできます

車いす
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